プロデューサーのジョエル・シルヴァーは、本作の脚本を最初に読んだ時、世界的大ヒット作となった『アンノウン』(11)の監督ジャウマ・コレット=セラと、主演のリーアム・ニーソンと再びチームを組むのに、まさに相応しい作品になると直感した。謎の散りばめ方がヒッチコック映画を思い起こさせ、ニーソンにぴったりのストーリーだと感じたのだ。
シルヴァーから脚本を送られたニーソンも、「読み始めたら、途中で止められなかった。映画化決定だ」と告げる。彼も、人々の心をつかんで離さないストーリーだと確信したのだ。
コレット=セラ監督は、『オリエント急行殺人事件』(74)のように、限られた空間での人間の行動を心理的に描いている点を評価した。ニーソンの次にキャスティングされたジュリアン・ムーアは、登場人物たちがとても危険な状況に閉じ込められているという点で、『タワーリング・インフェルノ』(74)のようなディザスタームービーを思い起こしたと言う。「狭い空間で、次に何が起きるのか、誰が犯人かもわからない。そこにはハイレベルなサスペンス要素が詰まっていたわ。」
「リーアムはまさに逸材だ。素晴らしいキャリアを持つ俳優として知られていたのに、人生の後半になって、ある日突然アクションスターになったんだ。彼からは目が離せないよ」とニーソンを絶賛するシルヴァーは、元ボクサーの逞しい身体で、緊迫したセリフを話すニーソンだけではなく、彼が表現する弱さも観客を惹きつけるのだと説明する。「彼は観客の目に入ってきた瞬間に、応援したくなるタイプの俳優だ。誰もが彼が傷つかないこと、成功することを望む。彼の演じる役柄と一緒になって、次に何をすべきか、どこへ行くべきか、絶望の淵に立たされる。これこそ、最高の映画体験だ。」
ニーソンが演じるビル・マークスは欠点だらけの男で、ニーソン自身もそこに惹かれたと言う。コレット=セラ監督は、「本作のようにテンポが速くエネルギッシュな映画では、冒頭で登場人物のイメージを膨らませる時間があまりない。だから、オープニングから観客の感情に訴えられる俳優の存在が重要だ。リーアムは、そんな映画に不可欠な俳優なんだ」と語る。
ジェン・サマーズ役は、ジュリアン・ムーアに決まった。ムーアをこの役に選んだのは、リーアムだった。彼らは知り合って長く、『クロエ』(09)で夫婦役を演じたことがあり、息も合っている。シルヴァーは、演技力の高いムーアをニーソンの相手役に持ってきたことで、各シーンがより素晴らしいものになったと喜ぶ。
北部の労働者階級出身で、清潔感があって常に笑顔だが、芯には本物の強さを持つ客室乗務員のナンシーには、サスペンスへの出演は初めてのミシェル・ドッカリーが抜擢された。大ヒットTVシリーズ「ダウントン・アビー 〜貴族とメイドと相続人〜」(10~12)で彼女を気に入ったシルヴァーのキャスティングだった。
ナンシーの同僚である客室乗務員のグウェンには、『それでも夜は明ける』(13)の名演技で称賛を浴び、アカデミー賞助演女優賞に輝き、今ハリウッドで最も期待と注目を集めているルピタ・ニョンゴが選ばれた。
JFK空港とロング・アイランド東部にある空港の滑走路のシーン以外は、全てニューヨーク州ブルックリンの防音スタジオで撮影された。『フライトプラン』も担当したプロダクションデザイナーのアレクサンダー・ハモンドとそのチームが、767をモデルに、ファーストクラス26席とエコノミー159席が並ぶ、50mほどの飛行機内のセットを作った。サイズは実物どおりではなく、通路は撮影機材が入るように調整され、天井高は靴を履くと188cmもあるニーソンに合わせて作られたが、通常のサイズに感じるように視覚トリックが用いられた。床のライトを常に点灯したままにすると、通路を狭く見せる効果があるのだ。細部のデザインは、ヴァージン・アトランティック航空の旅客機が参考にされた。
カメラの配置の都合で、昔のメルセデス・ベンツのガルウィングドアのように、両端が浮くように作られた。また、傾いたり揺れたりする場面のために、後部1/3は シーソーのように上下にガタガタ揺れるように作られた。さらに、特殊効果チームが飛行機の周辺に乱れた振動効果を加えた。
コレット=セラ監督は、機内と機外にカメラを行き来させる、よくあるカメラワークを避けた。本部でクルーやビルと通信する人々は登場するが、場面が管制センターに切り替わることはない。それによって、観客はどこからも助けが来ないことをリアルに実感できるのだ。
ビルともう一人の航空保安官のトイレでの格闘シーンは、重要な場面だった。コレット=セラ監督は、二人の大男を極小トイレに閉じ込めて闘わせるというアイデアをとても気に入っていた。アクションの開発には、数々の映画でニーソンとタッグを組んできたスタントコーディネーターのマーク・ヴァンセロウが加わった。「彼らは決して武術家ではないが、機内が彼らの仕事場であり、訓練した場所だ。僕たちは、二人の互角の男を想定したシナリオを作り、その後、狭い空間を考慮に入れた。広い場所でうまくいくテクニックも、限定された空間だと全く機能しない。肘は想定した方向に動かせないし、殴る強さも異なってくる」と説明する。
技術的に難しい撮影に果敢に挑戦した結果、コレット=セラ監督は、観客に自分も機内にいるような、真に迫る映画体験を提供できると確信している。